第1章 式の計算
1 展開
0 はじめに
皆さんこんにちは。今回から当分の間、式の計算をやります。式の計算とは文字を使った計算のことですが、文字を使った計算は中1・中2と習ってきて結構慣れてきましたよね。
毎年少しずつレベルアップする「式の計算」…、中3ではどんなことを習うのでしょうか?
ちょっと楽しみですよね(ほぼ強制…)。
では頑張って取り組んでください。
1 分配法則
まずは分配法則を使った計算から入りますが、分配法則は覚えてますか?
「忘れた!」 「知らない…」 「何それ?」 など、恐ろしいことをいう人がいるかも知れないので、とりあえず復習から入ります。
[分配法則] \(a(b+c)=ab+ac\)
言葉で言うと『 ( )にかかっているものは、( )の中のものに平等にかかる 』で、
イメージは、
では実際に例題を解いてみますので使い方をしっかり理解してください。
例題1 次の計算をしなさい。
(1) \(3ab(2a^2b-5ab+6)\)
(2) \((12x^2y-8xy^2-6xy)\div(-2xy)\)
(3) \((6a^2-3ab+4b^2)\times(-\frac{1}{2}a)\)
(4) \((-\frac{4}{9}x^2yz+\frac{5}{6}xy^2z-\frac{1}{2}yz^2)\div(-\frac{5}{3}xy^2z)\)
理解できましたか?
見るだけではだめですよ。実際に自分の手で書き写しながら式の流れを理解してくださいね。
2 展開
ではいよいよ本題です。
まず、始めに言葉を覚えましょう。
前の問題のように( )を崩してバラバラにすることを「展開」といいます。
よく使う言葉なので覚えておいてください。
そして次に考える問題は、この展開の発展バージョンです。
例題を通して考えていきましょう。
例題2−1 \((a+b)(c+d)\)を展開せよ。
例題の
解説・解答
\((a+b)(c+d)\)を展開するということは、
\((a+b)(c+d)\)の( )を崩してバラバラにすればよいのですが、
( )が2つもあります。どうしましょうか?
これは、右の をひとつのかたまりと考えて、
左の にひとつずつかけていく(こうして分配法則を使う)と考えます。つまり、
という感じです。そして、それぞれを分配法則で崩して完成です。
わかりましたか?
でも考え方がちょっとめんどくさくないですか?
そこで、これを
\((a+b)(c+d)=ac+ad+bc+bd\)という結果だけ見て、
となっていると考えると、スムーズに計算できるようになります。
では、この考え方でもう1問例題を解いてみましょう。
例題2−2 \((3x+2y)(4x-5y)\)を展開せよ。
例題の
解説・解答
どうですか?それほど難しくないでしょう。
3 公式の活用
さて、ここまで学習した範囲をマスターすればどんな展開の問題でも解けます。
ですが、この方法で解き続けると、少しめんどくさい&スピードが遅いのです。
そこでこれらを簡単に解くための公式を伝授しましょう。
ここで、「えっ公式!……… 覚えるのやだなぁ ………」と思う人がいるかもしれません。
確かに今までいろいろな公式が出てきてその都度覚えるのが大変だったと思います。
ですが公式とはもともと“楽”をするための道具です。
普通に解けば大変な問題が、公式を覚えていればなんと当てはめるだけで答えが出て、
それでいて正確で速い!ということで、これはどう考えても使わなければ“損ですね。
ですのでしっかり覚えて使いこなせるようになってください。
ただし、公式は使える問題と使えない問題があります。
使えないときはあきらめて、例題3の方法で解きます。
① \((x+\Diamond)(x+\boxdot)\)型
この型の展開は次の公式を使います。
[公式Ⅰ] 暗記 \((x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab\)
公式を文章で覚えると、
『 \((x+a)(x+b)\) は、 \(x^2\) + たしたもの x + かけたもの』てな感じです。
例題3-1 \((x+3)(x-5)\)を展開せよ。
例題の
解説・解答
公式に当てはめると、
\(x^2+(3-5)x+3\times(-5)\) ※公式Ⅰに合わせると、 a が 3 で b が -5 になります。
\(=x^2-2x-15\)
となります。
例題3-2 \((2a-3b)(2a-b)\)を展開せよ。
例題の
解説・解答
公式に当てはめると、
\((2a)^2+(-3b-b)\times 2a-3b\times(-b)\)
\(=4a^2-8ab+3b^2\)
となります。
慣れるまでかえって“めんどくさい”と思うかもしれませんが、慣れて暗算で出来るようになれば圧倒的にこっちの方が楽で、速くて、正確です。
たくさん問題を解いてはやく慣れてくださいね。
② \((\Diamond+\boxdot)^2\)型
この型の展開は次の公式を使います。
[公式Ⅱ] 暗記 \((a+b)^2=a^2+2ab+b^2\)
文章で覚えると、『 かっこの2乗は、 前2乗 かけたものの2倍 後ろの2乗 』
てな感じです。
例題4 \((2x-3y)^2\)を展開せよ。
例題の
解説・解答
公式に当てはめると、
\((2x)^2+2\times(2x)\times(-3y)+(-3y)^2\) ※上の公式に合わせると、aが2xでbが(-3y)になります。
\(=4x^2-12xy+9y^2\) となります。
③ \((\Diamond+\boxdot)(\Diamond-\boxdot)\)型
この型の展開は次の公式を使います。
[公式Ⅲ] 暗記 \((a+b)(a-b)=a^2-b^2\)
※この公式は「和と差の積」と呼ばれています
文章で覚えると、『 たしたものとひいたものは、2乗 ひく 2乗 』てな感じです。
例題5 \((5x-2y)(5x+2y)\)を展開せよ。
例題の
解説・解答
公式に当てはめると(※公式にあわせると、aが5xでbが2yとなります。)
\((5x)^2-(2y)^2=25x^2-4y^2\)
となります。
④ 3つの2乗型
この型の展開は次の公式を使います。
[公式Ⅳ] 暗記 \((a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ac\)
結構長い公式なので覚えるのが大変かもしれませんが、形をよ〜く見てみると、[公式Ⅱ]と似ていますね。それを意識して文章で覚えると、
『 それぞれの2乗と、それぞれをかけたものの2倍(aとb、bとc、aとcそれぞれをかけて2倍) 』
てな感じです。
例題6 \((2a-3b+5)^2\)を展開せよ。
例題の
解説・解答
上の公式にあわせると、aが2aでbが(-3b)でcが5となります。
\((2a)^2+(-3b)^2+5^2+2\times(2a)\times(-3b)+2\times(-3b)\times5+2\times2a\times5\)
\(=4a^2+9b^2+25-12ab-30b+20a\)
以上、基本4公式をしっかりと使いこなせるようにしてくださいね。
ここで今まででてきた公式をまとめておきます。再度チェックしてくださいね。
● 展開の公式のまとめ ● 覚えるコツは声に出すことです!!
[公式Ⅰ] 暗記 \((x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab\)
[公式Ⅱ] 暗記 \((a+b)^2=a^2+2ab+b^2\)
[公式Ⅲ] 暗記 \((a+b)(a-b)=a^2-b^2\)
[公式Ⅳ] 暗記 \((a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ac\)
4 展開の応用
では、つぎにちょっと応用編に入ります。
といっても、別に難しくなるわけではないので安心してください。
例題7 ◇いろいろな式の計算1◇
\(-5(2a-7b)(2a+7b)\) を計算せよ。
この問題を解くにあたって次のポイントを頭の中に叩き込んでください。
Point
展開する式の前や後に何かくっついているときはカッコをつけてその中に展開!
例題の
解説・解答
まず問題を見てみると、
−5をなくして、(2a-7b)(2a+7b) だけ見れば、[公式Ⅲ]を使えば解ける問題です。
しかし、かっこの前に -5 がくっついていますね。
このようなときは、まず、
\(-5(4a^2-49b^2)\)
\(=-5(\hspace{30})]とかいて、[latex](\hspace{30})\)の中に\((2a-7b)(2a+7b)\)を展開したものを書き込みます。
そして、最後に分配法則で終了です。
では解いてみましょう。
\(=-5(\hspace{30})]のかっこの中に、[latex]4a^2-49b^2\)を記入
\(=-5(4a^2-49b^2)\) 分配法則
\(=-5\times(4a^2)-5\times(-49b^2)\)
\(=-20a^2+245b^2\)
例題8 ◇いろいろな式の計算2◇
\(2(x-5)^2-4(x-3)(x+2)\) を計算せよ。
例題の
解説・解答
基本的には例題7と同じで、ただ2つになっただけです。
とりあえず、\(2(\hspace{30})-4(\hspace{30})]と書いて、かっこの中に[latex](x-5)^2\) と \((x-3)(x+2)\)を展開したものを書き込んで、その後分配法則でかっこを崩して、計算します。
\(2(x-5)^2-4(x-3)(x+2)\)
\(=2(x^2-10x+25)-4(x^2-x-6)\)
\(=2x^2-20x+50-4x^2+4x+24\)
例題9 ◇置き換えを使った問題◇
(1) \((2a+3b-3)(2a+3b+2)\) を展開せよ。
(2) \((a-2b+3)(a+2b-3)\) を展開せよ。
例題の
解説・解答
(1)
このままだと、公式も使えずただ1つずつ展開するだけで芸がありません。
よく見ると、2つのカッコに共通して「 \(2a+3b\) 」があります。
こういうときは、次の“置き換え”という技を使うと、公式が利用できて簡単にとけます。
\((2a+3b-3)(2a+3b+2)\)
ここで \(2a+3b=A\) とおく。 ←これが置き換え!!
すると式は、 \((A-3)(A+2)] となり、これを展開すると([公式1\))、
\(A^2-A-6\)
これ以上どうにもならないので、
\(A=(2a+3b)\) を \(A^2-A-6\) に戻す。
\((2a+3b)^2-(2a+3b)-6\)
これを計算して、
\(4a^2+12ab+9b^2-2a-3b-6\) 出来上がり!!
(2)
“置き換え”は符号も含めて全く同じ物でないと使えません。
ということで、この問題は使えない…!
そんなことはありません。少し工夫をしてみましょう。
\((a-2b+3)(a+2b-3)\)
\(=\{a-2b+3\}\{a+2b-3\}\)
\(=\{a-(2b-3)\}\{a+(2b-3)\}\)
ここで、\(2b-3=A\) と置く。
\(=\{a-A\}\{a+A\}\)
\(=(a-A)(a+A)\)
\(=a^2-A^2\)
\(A=(2b-3)\) を戻して、
\(=a^2-(2b-3)^2\)
\(=a^2-(4b^2-12b+9)\)
\(=a^2-4b^2+12b-9\) 出来上がり!!
※置き換えは全く符合が同じ、または全く符合が違う2つ(3つ以上でもいいけど)のものがあれば利用できます。
最後に数の計算への応用です。
え〜、数の計算なら変なことしないで普通に計算した方が絶対はやいよ…というつっこみはなしです。
やってみると案外その解き方の美しさに感動する…と思うのですが…
例題10 乗法公式を利用して、次の計算をせよ。
(1) \(202\times199\)
(2) \(2005\times1995\)
例題の
解説・解答
(1)
\(202\times199] を [latex](200+2)(200-1)\) として、
[公式Ⅰ] \((x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab\) に当てはめます。
\((200+2)(200-1)\)
\(=200^2+(2-1)\times200+2\times(-1)\)
\(=40000+200-2\)
\(=40198\)
(2)
\(2005\times1995\) を \((2000+5)(2000-5)\) として、
[公式Ⅲ] \((a+b)(a-b)=a^2-b^2\) に当てはめます。
\((2000+5)(2000-5)\)
\(=2000^2-5^2\)
\(=4000000-25\)
\(=3999975\)
理解できましたか?
(2)は明らかに、公式を使った方がぐ〜んと楽だと思います。
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